今と違って昔は、異学年が集まって、缶蹴りやメンコ、こままわしなどをして遊ぶのが普通でした。
今は、ネットで日本国内どころか世界中の友達とゲームができるのですから、技術の進歩の速さに驚くばかりです。
お手伝いにしても、ボタンひとつで済むようになって子供の出番が少なくなっていますが、実は子供の力を削いでいるかもしれません。
この昔の遊びや手伝いに思考力や社会スキルを伸ばす秘訣が隠れているとすれば、今の生活を少し見直す必要があるかもしれません。
今回は、思考力を中心に話を進めてみます。
見えない線を引く
野外で楽しく遊ぶには、缶蹴りが最高でした。
このゲームは、鬼が隠れている友達を見つけ、「◯◯ちゃん、見っけ!」と告げて、缶を足で踏むと、◯◯ちゃんは鬼に捕らえられます。
しかし、鬼が缶を踏む前に缶を蹴飛ばすと、捕らえられていた仲間は全て解放されるというものです。
ですから、鬼は缶からあまり遠ざからずに友達を見つけなければなりません。
さらに、一方に気を取られていると他の仲間が缶を蹴飛ばしてしまいますから、絶えず全方向に気を回さなければなりません。
加えて、自分の足の速さと友達の足の速さも計算する必要もあります。
さもないと、せっかく友達を見つけたのに、先に友達に缶を蹴飛ばされてしまうこともあります。
缶蹴りは緊張の遊びです。
何しろ要領が悪いといつまでも鬼が続きますからね。
ところで、缶蹴りでもかくれんぼでも言えるのですが、相手から見えない位置に自分を隠すのはとても空間認識を高めます。
相手の視線と自分を結ばなければ、自分が見つかってしまうからです。
隠れている場所が木の上でも机の下であっても、相手との間に線を引く作業を繰り返して遊ぶゲームとも言えます。
算数や数学で、平面図形には対角線が引けるけれども、円柱や三角錐など空間図形の中で線を結ぶ問題になると途端に思考が止まってしまう子がいます。
空間に線を引いた経験が少ないことが予想されます。
そのときになって問題集をやっても、身に付いていない空間認識を鍛えるのはなかなか難しいことです。
「なにそんなところに隠れているの?」という状態が空間認識を高めているとしたらどうでしょう?
「見つけた!見えるよ、そこは。」と教えてあげて、空間認識を遊びの中で高めてあげたいものです。
経験が計算する力を高める
小学校で、掛け算九九までは何とかついて来れる子も、割り算になると怪しくなり、余が出る計算になるとさらに大変になることがあります。
余りが出ることは日常にたくさん転がっているのに、小学校の算数で初めて経験するようでは子供がかわいそうです。
食事を作る時、例えばミニトマトを10個用意して、お父さんとお母さんの自分と下の子の4つの皿に分けさせるお手伝いをさせることからシミュレーションしてみます。
お手伝いを頼まれた子は張り切って4つに分けようとしますが、すぐに困ってしまいます。
10個のミニトマトを四人で分けると、どうしても2個余りますからね。
そこで、子供は考えます。
残りの2個は体の大きな父親に分けようか、それとも半分に切ろうかと。
半分にするなんてすごい発想です。
すでに少数の概念まで獲得したことになるからです。
また、この時子供は4つの皿に1個ずつのせるのでしょうか?
それとも最初から見当をつけて2個ずつのせるのでしょうか?
算数では見当をつけて答えを見つけることはとても大切ですが、それを日常生活で試せたら、見当をつける便利さも理解できるはずです。
当たり前と考える日常は、どの家庭でも変わりはありません。
しかし、それが何につながるかを意識した時、意味が変わります。
これは、大人の社会でも同じです。
どう解釈するかで価値は変わりますからね。
今回はここまでにします。
次回をお楽しみに。
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