女子ワールドカップでなでしこジャパンが優勝した時の澤キャプテンの言葉に
「苦しい時は、私の背中を見て!」
というのがありました。
普通なら、
「監督の言葉を思い出して」
のような気がしますが、実は言葉ではなく映像を見せるのは、とてつもなく影響力があるのです。
まさに、澤の言葉は名言です。
Hidden curriculum
Hidden curriculumは日本語で「隠れたカリキュラム」と言います。
学校の時間割は、国語や数学と表現される見えているカリキュラムですが、これとは違います。
先生の姿そのものが、隠れたカリキュラムであり、大きな影響力を持ちます。
見える時間割からは、どのように教えるかはわかりません。
しかし、教えてくれる先生によって興味関心どころか、成績までも違ってくるという経験は誰もがもっているはずです。
サッカーにおいても、キャプテンはどのチームにもいますし、役割も同じですが、人によって影響力が異なるのは、先生の例と同じです。
とくに隠れたカリキュラムの影響が大きいのは、教えることと行動が結びついている場合です。
例えば、学校で「時間を守る大切さ」を勉強しても、時間通りに授業が始まらなかったり、遊びで遅れて教室に戻った生徒に何の指導もしなかったりであれば、生徒は「時間は守らなくてもよい」ことを学習します。
家庭でも、母親が「信号を守らないと、命を失うよ。」と教えたとしても、わが子を車の後部座席に乗せて、黄色信号でつっこんでいけば、「黄色は行ってよい」と学びます。
教えるつもりがないことを学んでしまうのですから、恐ろしいことです。
人は言葉ではなく、見た目で本質を理解してしまうのです。
映画の感動的なシーンに言葉がないのも頷けます。
ターミネーターが溶鉱炉に解けていく時に、「頑張れよー!」と呼びかけるより、親指を立てる方が意味を想像させます。
映画「いまを生きる」では、生徒の興味を高め、楽しい指導を続ける教師(ロビンウィリアムス)を校長が辞めさせるシーンで、「やめさせるな」と生徒が連呼するわけでなく、机の上に全生徒が無言で立ちました。
その校長への無言のメッセージは生徒の意思を強く表しました。
お昼の1時に約束したデートに15分遅れた彼氏に、笑いながら「私、怒っているんだから」と言うのと、怒りの表情で「私、怒っていないから、気にしなくていいよ」では、どっちが迫力がありますか?
本当に言葉でないものは、多くを伝えますね。
大人は、そういう言葉ではない日常の姿で、子供を導かなければなりません。
だからこそ、「子供は親の後ろ姿を見て育つ」と昔から言われ、多くの人が納得しているのだと思います。
子供に偉そうなことばかり言っている私の後ろ姿はどう映っているのでしょう。
とても、澤キャプテンみたいに
「苦しい時は、お父さんの背中を見て!」
とは言えません。
頑張りどころです。
今回はここまでにします。
次回をお楽しみに。
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