私の住む地域では自治体自体の緊急宣言が出されており、これまでの日常は戻っていません。
週末に、黙々と煙をあげる居酒屋でキンキンに冷えたビールを飲んで、「フー」とか「ンー」と唸ることができません。
いつまで続くのでしょうね。
そんな中、店を開けたり、酒類を提供したり、イベントを開催したりと、曖昧なルールのもとでは、徹底しないこともあるようです。
自粛する方もしない方も、拠り所にしているのは個人の権利。
今回は、そこを掘り下げてみます。
与えられた権利
明治維新はドイツ(プロイセン)、第二次世界大戦後ではアメリカの考え方を取り入れた憲法ができました。
どちらも日本独自のものとは言いがたく、対外圧力が影響しています。
現在の法体系も、プロイセン憲法の影響は色濃く残っていて、日本国憲法がそこに乗っかっている感じです。
幕府に5人組で管理されていた江戸時代を過ごした日本人です。
この5人の中の誰かが、村を抜け出したら、連帯責任を負わされますから、互いに意識し、空気を読む文化が定着しました。
その日本人に与えられた個人の権利ですが、少し間違った解釈をしている気がします。
今の時代にマイナンバーさえ普及せず、コロナの一時金でさえ手作業で進みました。
先進国のほとんどは、マイナンバーに紐付けされた個人口座に、数日のうちに入金されたのに対して、日本では個人も法人も入金の遅れがいまだに続いています。
その理由は、「個人の権利が侵害される可能性がある」と反対している人を説得できないからでしょう。
Google検索で、自分の趣味趣向は監視され、自分に都合の良いニュースや品物の情報が画面には現れます。
クレジット会社は、口座番号だけでなく、支払い履歴なども把握しています。
LINEでは、データ管理センターが国内に移されたと聞きますが、それまでは韓国にありました。
ということは、自分の趣味趣向、友人関係などを民間会社に晒して、国には教えないという状況になっています。
いろいろな問題があって政府を信じないのはわかる気もしますが、民間よりは信用できるのではないでしょうか。
もちろん、規約に同意して利用しているのでしょうが、小さな字で長々と書かれたものを全て理解して、同意している人がどれだけいるでしょう。
あの説明の中には、消費者の自己責任の部分も巧妙に入れ込んであり、マイナンバーよりもよほど怖い気がします。
日本に民主主義を教えたアメリカは、マイナンバーで登録された口座情報を政府が管理していて素早い対応をしています。
その民主主義を教えたイギリスでは、個人の権利を制限して、迅速な支援金の配布と引き換えに、かなり厳しいロックダウンを何度も行いました。
日本人の考えるプライバシーの権利って、正しいのでしょうか。
権利か権理か
以前、長州藩の話をしたことがありますが、この「権利」もそこに関係があります。
rightを「権利」を訳したのが、長州藩の西周(にし あまね)だったからです。
この翻訳に猛烈に反対したのが、中津藩の福沢諭吉でした。
福沢は、「利」という文字を使っては、rightの本当意味が伝わらないと説きます。
彼は、四文字熟語で「権理通義」と訳そうと考えました。
義に通じる理(ことわり)をもった力とでも言うのでしょうか。
全て個人の自由に任されてはいないと伝えたかったのでしょう。
そこに、「公」や「公共」を入れたかったに違いありません。
私も個人の権利は公に補償して欲しいのですが、公を蔑ろにしてなくしてしまおうとは思いません。
公の意識も大切にしたいと考えています。
むしろ、公の意識があまりにも欠如している気さえしています。
そもそも、電車の中でも、お店でも、自分の家を一歩出て、誰かと居合わせた時点で「公」になります。
ホテルの廊下も自分の部屋でないのですから、そこは公です。
公とは「世間様」と言い換えることができるかもしれません。
自分でない世間様に申し訳ないと言う観念は、実に意味深いものです。
そこには、「世間様」という公に対しての畏怖とか尊敬があるからです。
個人主義が蔓延すると、この「世間様」が軽んじられます。
バランスが大切です。
ところで、最近江戸文化が見直されてきています。
特に、江戸仕草については沢山の本も出されていますし、日本人の美しさを見直すこともしばしばです。
狭い道を傘を差してすれ違うとき、「傘かしげ」というのがあります。
互いに自分だけ濡れないでおこうというものではなく、互いを思い遣るものでした。
また、「うかつ謝り」というのは、すれ違ったときに足を踏まれた方が「私がぼけっとしていました。ごめんなさい」というもので、今の時代からすると懐の深さを感じます。
何かあると、原因を他に求めて糾弾することばかりの劣悪なメディアに、「公」より「私」を刷り込まれている今、立ち止まって考えるヒントになりそうです。
今回はここまでにします。
次回をお楽しみに。
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