穀雨(こくう)の季節になりました。
車で少しドライブすると、水を張った田植え前の田んぼが目に入ってきます。
私などは身勝手で、晴れない日が続くと恨めしげに空を見てしまいますが、田植えの準備に程よい雨は必要でしょう。
昔、米作りを任せてもらったことがあります。
僻地の学校で、体験学習の一環として田んぼを借りてやりました。
教える側の私は、山間地の棚田での米作りなど全くの未経験、学ぶ側の山の子たちは家の手伝いでよく知っている状態。
誰のための体験学習かわかりませんでした。
今回はその時に感じた米作りと人間の成長について触れたいと思います。
田おこし
稲刈りを終えた田圃(たんぼ)で、田植えまでの間に蓮花(れんげ)を植えることがあります。(今は化学肥料全盛で、蓮花ばたけは見なくなりました)
- れんげの根には肥料の主成分の窒素を固定する菌が付く
- 根の張った蓮花を掘り起こすのは根のない田んぼを掘り起こすよりも簡単
というメリットから、稲刈り後の秋の田んぼに蓮華の種を蒔くことがあったのです。
そんなことをしなくても水を張って田植えをすれば良いと思ってしまいますが、それでは痩せた田んぼになってしまいます。
多分、江戸期は稲刈り後も水を張った湿田だったのですが、科学的な見方ができるようになった近現代では、わざと乾いた状態にし、田おこし時期を迎えます。
なぜなら
- 土の中に空気が入って、微生物による分解が促進され、植物に必要な窒素に変化する。
- 土を起こして乾かすと、土中に空気がたくさん入るので稲根の成長が促進される。
- 雑草は田んぼ表面近くに種があるので土中深く埋め込めば、雑草取りの手間が省ける。
- 土自体の保水性や養分を保つ力も向上する。
からです。
そんな大きな意味があるとはつゆ知らず、私は屁っ放り腰(へっぴりごし)で、文句を言いながら、鍬を使って田おこしをしました。
代掻き(しろかき)
田起こしが終われば、代掻きです。
田んぼに水を張って、土をさらに細かく砕き、丁寧にかき混ぜて、土の表面を平らにします。
この作業には
- 田んぼの水漏れを防ぐ。
- 土の表面をならしてムラなく生育するようにする。
- 苗を植えやすくして発育を良くする。
- いろんなものをムラなく混ぜ込む。
- 有害ガスを抜き、有機物が肥料化するのを進める。
という意味があります。本当に「深いー!」のです。
こういった一連の作業と人間の成長を関連させるといくつか気付かされることがあります。
水が高いところから低いところに落ちるように、何事も自然の流れがあって、それに逆らうと苦労しますよね。
これを、社会に当てはめてみましょう。
学校や会社でも同じ組織で同じメンバーで、新しい人が来たり古い人が去ったりしなければ、痩せた田んぼになる危険が増えます。
変なガスも溜まるかもしれません。
いったん組織の深いところまで掘り起こしてみて、ドロドロにかき混ぜて、次に向かう必要がありそうです。
研修等で、KJ法やブレーンストーミングを行いますが、まさにこれです。
ぐっと掘り起こして、ドロドロにかき混ぜてこそ、次のプロジェクトが成功しそうです。
あとは、それを強く進めるリーダーシップと意志を同じくしてついていくフォローワーシップが必要でしょうが。
子育てだってそう。
勉強だけでなく、いろんな人に合わせたり、自然と遊ばせたりする必要がありそうです。
そう言えば、社会で成功している子の特徴は、たくさんの体験でした。
- 自分でチケットが買える
- 自分で寿司の注文ができる
- 自分でわからないことを伝えられる
- 昆虫採集など自然体験が多い
チケットを買うことだけでも時間も手間もかかるでしょう。
任された子供は、初めてのことでドキドキも止まらないでしょう。
しかし、そうやって自分が掘り起こされて、社会の中でドロドロに掻き混ざって、次につながるわけです。
なんでもかんでも親がやってしまうと、田おこしや代掻きなしの幼少期になってしまい、後での成長が心配されますね。
今回はここまでにします。
次回をお楽しみに。
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