教員の世界は、40歳前後に行政職に転ずるかを考える機会があります。
私もその年頃に1つの学校ではなく、すべての学校に関わる仕事に興味が湧き始めました。
学校は教育委員会から指示された多くのことをやらなければなりませんが、全てが納得できるものでありません。
無駄と思える報告や効果を期待できない施策もかなりあるからです。
ですから、自分が仕組みそのものを考える仕事に就いてみようと試験を受けたのです。
そして、教職員研修センターに配属されました。
張り切っていた私ですが、その張り切りが失敗を招いてしまいました。
かなり落ち込みましたが、その時の上司の対応が見事でした。
今も忘れられないシーンです。
登録システムの変更
私が着任するまで、各学校は職員データをFD(フロッピーディスク)で提出していました。
例えば、
- 校長2年目 青木一郎
- 教頭3年目 井上ニ子
- 教務主任1年目 上田三郎
のように職員の役割を送るのです。
受け取る研修センターはFDを1枚1枚開いて取り入れるのですが、中には空っぽもあり、効率の悪い仕事でした。
そこで、提出する学校側のことを考えて、2つのことを改善しました。
- 提出のフォームをHPからダウンロードしてメールで提出
- フォーム自体にプルダウンメニューを入れる
ところが学校現場では、かえって不便になったとの評判が聞こえてきました。
メールにファイルを添付するのは今では当たり前のことです。
しかし当時は、FDでなくメールに添付することの「信頼性」を疑う人や、そもそも添付自体ができない人もいたのです。
主に教頭が提出の役割を担っていたのですが、「テンプ?」といったリテラシーの人も珍しくなかったのです。
それでも、沢山かかってくる問い合わせに対応しました。
そして何とか新しいシステムが動き出したと安心した時に、事件は起こりました。
小さな学校の教頭の泣きそうな報告
電話の向こうの声は、小さくて、恐る恐るの感じです。
「すいません。教えてください。パソコンの画面上には自分の学校の先生しかいませんが、印刷すると、”イザベル・アジャーニ”や”黒柳徹子”が追加されるのです。私はふざけているわけではないのですが、どうしたら良いでしょうか?」
私は背筋が凍りました。
エクセルファイルに、学校の報告者からは見えないシートを隠していたことを忘れていたのです。
そのシートは正常に動くかどうかを確かめるためのものでした。
試しですので、
- 校長1年目 アントニオ猪木
- 教頭2年目 上田馬之助
- 教務主任1年目 ジャンボ尾崎
- 生徒指導主事2年目 イザベル・アジャーニ
- 保健主事 黒柳徹子
といった具合に8人の仮想職員を入れていました。
しかし、これには大きな欠陥がありました。
職員数が8人を超えると何の影響もないのですが、7名以下の学校は全く入力した覚えのない職員(しかもプロレスラーや芸能人)が追加されてしまうのです。
早く県内のすべての学校に訂正ファイルをダウンロードするように伝えなければなりません。
気持ちは焦るばかりです。
これは大目玉だなと思っていると、リーダーが声をかけてくれました。
今でも忘れられない見事なリーダーシップです。
今回はここまでにします。
次回をお楽しみに。
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