新型コロナウィルスの感染防止のために、マスクが当たり前になってきました。
これまでは、にっこりとした時の白い歯を見ながら挨拶をしていましたが、今は表情を窺い知ることが難しくなりました。
それでも、目で挨拶ができますから、自然と相手の目をよく見るようになりました。
もともと、日本人は「目は口ほどに物を言う」と表現していました。
ですから、サングラスをかけて目が見えない状態よりも、マスクで口元が見えない方が抵抗がなかったのかもしれません。
しかし、欧米人は大きく口元で表現しますから、サングラスよりもマスクは苦手なのかもと勝手に思っています。
ところで、目を隠そうが口を隠そうが、挨拶はやっぱり大切です。
挨拶とスポーツ
以前に宮崎県出身のオリンピック柔道メダリスト大迫明伸氏の講演会で聞いた話です。
柔道では、相手の呼吸を読んで、仕掛ける技のタイミングを探ることがとても大切です。
しかし、中高生が力や体格に頼る柔道で強くなってしまうと、タイミングよりは筋力が重視されてしまうそうです。
もちろん、挨拶などは後回しにされてしまいます。
しかし、相手の呼吸も読まずにできる柔道の可能性は限られていて、すぐに壁にぶつかります。
体格の良い中学校時代のチャンピオンが、高校ではベスト8にも入れないのも良くある話です。
そこで、基本を見直すことになります。
基本、それは挨拶です。
今、このタイミングは、相手の注意が自分に向いているか。
目があった時の相手に挨拶とともに自分の表情はどうあるべきかなど、相手の呼吸を見ることで、気持ちのよい挨拶をすることができます。
相手の呼吸を読んで業を仕掛ける競技で、相手の呼吸も読めずに挨拶のタイミングさえ逸してしまう選手が、どれだけ強くなるのでしょう。
日常でも、挨拶を通して何度も呼吸を読む訓練をすることが、目には見えないけれども大切な訓練になっています。
私は、これを聞いて、どのスポーツでも同じだと思いました。
意味のないパスを出してしまうサッカー選手、
フェイントのタイミングが分からないバドミントン選手、
相手意識が足りないことで技術を生かせないことは他にもありそうです。
しかも、仲良くなるタイミングまで逸してしまいそうで怖いです。
挨拶による心理的安全性の確保
JALの国際線のキャプテンと副キャプテンは、毎回、同じ組み合わせで飛行機を運航させるのではないそうです。
その日の路線によって組み合わせが変わります。
狭いコクピットの中、仲良くない2人が500人の命を預かっていることを想像すると怖くなります。
安全は、何でも言い合える仲が前提です。
異常を示すデータやランプを教えるのを躊躇(ためら)うような人間関係では困ります。
初めての2人が仲良くなるには挨拶がとても大切です。
挨拶は、「おはようございます」「こんにちは」と型があり、特別なことを要求はしません。
簡単ですし、定型の挨拶が拒否されることはありません。
だからこそ、毎日挨拶をたくさんして、仲間の呼吸を見て欲しいのです。
タイミングのよい挨拶ができない社員が、困っている社員のサインに気づけるでしょうか。
自分が迷惑をかけてしまった時に、相手の表情が読めるでしょうか。
随分とレベルの高い話になってしまう気がします。
挨拶をする社員側の視点に立ってみると、リーダー側の改善点も見えてきます。
つまり、挨拶しやすい存在かと言うことです。
挨拶を受け入れるオープンな雰囲気、思い切って挨拶をした社員の心意気を分かってあげられる受容性など、考えてみる必要がありそうです。
挨拶の苦手な私が言うのも気が引けますが、挨拶で組織は明るくもなりますし、互いを気遣うことも始まります。
意味のない挨拶を押し付けようとは思いません。
意味を見出せば挨拶は自ずと変わるはずです。
今回はここまでにします。
次回をお楽しみに。
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