普段、「癌」という言葉を聞いたら、辛い吐き気や髪の毛が抜け落ちることを想像してしまいます。
確かに、陽子線治療でも、これらの心配が皆無ではありませんが、治療はいたって簡単です。
陽子線治療の実際
陽子線治療は、これまでの放射線治療とは一線を画します。
これまでの放射線治療は、腫瘍が皮膚表面から5cmの位置にある場合、表面からその部分までに、放射線が少しずつ減退しながら届きます。
つまり、正常部分にまで放射線の影響があり、腫瘍そのものに届く頃は効果が薄まってしまうことが考えられます。
陽子線の場合は、腫瘍部分に焦点を当てて治療します。
これは、陽子線が焦点部分で一番エネルギーが高いことを利用しています。
勿論、癌以外の部分に陽子線の影響がないわけではありません。
私の場合は、腫瘍が鼻の奥ですので、正面から当てる陽子線の影響で放射性皮膚炎で皮膚の表面が変色したり、口の中に口内炎ができたりするのは覚悟しなければなりません。
しかし、ステージ3の私が冷静にいられるのは、その精度に信頼を寄せているからです。
昔、渡辺淳一の小説の中で、医師免許を持たない島の技術者が免許を偽って大手術を成功させるというものがありました。(結局は、バレてしまいますが)
知識とスキルは異なります。
まして、人間のスキルは、その日の気分や体調など様々な要因に作用されます。
それを、最新のシステムに頼れるのが、安心材料だったのです。
では、陽子線治療の大まかな手順について、説明していきます。
手順1 内視鏡での確認
内視鏡で、鼻腔内を確認します。
簡単な麻酔をしてくれますが、違和感はあります。
手順2 CT/MRIでの検査
陽子線治療センターに来る前に、CTやMRIを受けていましたが、再度、両方の検査をします。
陽子線を当てる角度や量などを正確に算定するためです。
これらの検査は造影剤を入れてやります。
少し体が熱くなりますが、しばらくすると戻ります。
検査後に水を飲むよう勧められます。
手順3 照射用マスクの作成
照射する部位が動かないようにマスクを作成します。
具体的には以下の通りです。
- 少し熱いプラスティックの柔い感じのものを顔に乗せて固まるまで待ちます。
- 型を整形し、口周りの穴を整えます。
- 照射の最中に呼吸で顔自体が動かないようにするため呼吸用ピースを作ります。
これは上下の歯形に合わせてピースを作り、円筒形のパイプを通して呼吸するものです。
手順4 デモンストレーション
- 実際に陽子線治療室で、手順3で作った固定用マスクをして頭を治療台に固定します。
- 呼吸用マウスピースを歯形に合わせてくわえます。
これらのことが確認できれば、いよいよ次の日から陽子線治療が始まります。
治療は、全体を通しても15分程度、照射時間は1分程度です。
私が気をつけたのは
- 呼吸用のマウスピースで上手に静かに呼吸すること
- 目への影響を減らすため、目を閉じて吐いても1点を見つめ眼球を動かさないこと
でした。
あとは、信じるのみです。
信じなければ、進みません。
顔全体をシールドで固定され、全く動けず、唾を飲み込むことも禁止され、唯一空いた口周りの穴からパイプで静かに呼吸をする状態ですが
心が楽になりました。
癌をやっつけます。
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治療のメソッドをこれほど冷静に説明できて、心穏やかに臨めるなら、きっとやっつけることができるでしょう。