脳腫瘍を克服

脳腫瘍を克服(4) 後遺症

腫瘍も取れて、締め付けていた金具も取れたのですから、爽快な気分になると思っていましたが、元の状態には戻っていませんでした。

眼振(がんしん)

なんと、手術後の眼振が止まらないのです。

眼振というのは、絶えず細かく眼球が揺れている状態です。

人から見たら、黒目が小刻みに動いていますから、明らかに普通ではないのです。

しかも、私の場合は、画像が遅れてついてくるような感じです。

腹話術師のいっこく堂さんのお得意芸で、声が遅れて聞こえてくるものがありますが、私の場合は、画像が遅れてついてくるのです。

右を見たら、それまで見ていた正面の画像が少し残って、右の風景に変わる感じです。

そんなバカなと思われるでしょうが、私が一番、そんなバカなと思っていました。

そのため病室からリハビリ室に移動するのも一苦労です。

なにしろ、真っ直ぐに歩くのが難しいのです。

本も読めませんし、文字を上手に書けません。

そんな状態でしたが、震える字でお世話になった方々に手紙を書きました。

それはそれで臨場感を出せましたが、不安は解消されません。

仕事に復帰できるだろうか?

車の運転はできるだろうか?

この眼振は、次第に収まっていきましたが、退院時に車の運転ができるほどまでには回復できませんでした。

嚥下と発音

手術後にやっと普通食になりましたが、驚くことが、また起こりました。

噛んでも噛んでも、食べ物が奥に入っていかないのです。

普段、誰も意識していないと思いますが、人は上手に舌を動かしながら食べ物を飲み込んでいきます。

舌が麻痺していると、これが難しいのです。

いつまでも奥歯で噛めない感じです。

汚い話ですが、仕舞いには手を突っ込んで食べ物を奥に動かしました。

舌が上手に動かないのは不便だと思っていたら、次の試練が待っていました。

発音です。

「着払い」(チャクバライ)が「ヒャクバライ」となってしまうのです。

顔右半分の引きつり感

後頭部から腫瘍を取ったにもかかわらず、顔の右半分の引きつった感じが抜けません。

この違和感は、人からは分からない自分だけのものです。

眼振、嚥下、発音の違和感は退院後次第に消えていきましたが、顔の違和感はずっと残り、今もあります。

多分、今の私を知る人でも、この違和感に気づいてくれる人はいないでしょう。

私も、それを言い訳にして、諸事から逃げたくはなかったで、これまで言いませんでしたが、脳腫瘍の手術は、時に、そういった違和感をもたらすのだと思っています。

病からのメッセージ

こんな感じで、手術後も違和感があったし、一部は今も続いていますが、全部が全部悪いことばかりではありませんでした。

考える時間は、たっぷりありましたから、いったい自分は何をやりたいのかを考えました。

それで、何種類かのランキングを作ってみました。

すると食べたいものは、一流レストランのものではなく、家庭のご飯であり、やりたいことは心配をかけた両親や家族、知人へのお礼でした。

何でもできる元気な時は、美味しい寿司が食べたいとか、おしゃれをしたいとか、考えるのに、病を得ると、何でもない日常が特別になります。

となると、日常を大切にすることが、とても価値があるように思えてきます。

 

ただ、問題なのは、この気づきは、体がげんきになるにつれ、薄くなってしまうのです。

 

決意が本気かどうかは、続くかどうかです。

これは仕事でも同じ。

続かない程度の決意は、本気ではないのです。

そう言って自分を戒めても、続けることは本当に難しい。

だからこそ、続けるための伴走者が人には必要だと思うのです。

 

今回はここまでにします。

続きはまた次回。

 

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