手術後の身体的なリハビリは順調に進んで行きました。
進まなないのは、メンタルのリハビリでした。
「こころ」の語源は、一説によると「コロコロと変わっていくもの」です。
少しずつ数値が上がる体力面と違い、気持ちは行ったり来たりを繰り返します。
職場から、一人いなくなると、その分の負担は誰かにいくわけですから、職場に迷惑をかけていると思っていたのです。
いつまでも、リハビリをしていていいのだろうか?
しかし、現実は、私の心配を見事に裏切ってくれました。
勝手な思い込み
その時の私は、中間管理職でしたし、それなりに自分が発信したり、組織をまとめていた自負がありました。
違う言い方をすれば、
「自分が、組織を背負っている。自分が柱だ。」
と勝手に思い込んでいたのです。
自分がいないと
- 組織が緩む
- 前例主義になる
- 責任の所在が曖昧になる
と実におめでたい意識でした。
手術前の入院時こそ、いくつかの確認や問いの連絡がありましたが、すぐに、それもなくなりました。
心配していた職員も、私がいる時以上のパフォーマンスを見せているとの報告もありました。
嬉しいような寂しいような感覚に囚われました。
結局、自分の存在に価値はあったのだろうかと自問もしました。
結論として、組織が健全なら、多少の変化を柔軟に吸収することがわかりました。
もっとも、スーパーな人間がいて一時的に組織のパフォーマンスが上がったとしても、仕組みにまで高めていないと、そのスーパーマンがいなくなれば組織が瓦解します。
その視点から考えれば、良い組織を作れていたのだと解釈をしました。
人生の出番
人生は、それぞれのステージで、動きたくても動けない時期があります。
病気であったり、育児であったり、介護であったり。
その時に、頼れる組織であることが大切です。
働き方改革が進んでいますが、動きたくても動けない人に対して
「今は仕事をセーブして、同僚に頼る時期。動ける時期になったら、動けない人を支援してね。」
と言える職場環境でありたいものです。
ところで、ミツバチの2割はすごい働きをし、6割がまあまあ、残りの2割は巣の中で楽な仕事をしているかサボってます。
2割のサボっているミツバチがズルく思えます。
しかし、ミツバチの巣に偵察に来たスズメバチをやっつける時に、とんでもないヒーローに生まれ変わります。
この偵察に来たスズメバチを、そのまま帰してしまえば、大群のスズメバチが襲ってきて、ミツバチの巣は全滅しますから、決して帰すわけには行きません。
偵察のスズメバチをやっつける作戦は、「熱」です。
ミツバチの致死温度は50度、スズメバチは45度ですから、これを利用するのです。
ミツバチはスズメバチを蜂球といわれるミツバチの絡まりの中に閉じ込め、一斉に羽を震わせて、球の中の温度を上げます。
その温度は47度。
スズメバチは、そこで、The End。
すごい作戦です。
しかし、日頃、精一杯働いている蜂に、温度を上げるほど羽を震わせる余力など残っていません。
この蜂球を作るのは、さっき私が、サボっていると2割と紹介した集団です。
「信長の原理」
という最近売れた本では、この役に立たない2割を、信長は殺してしまいます。
しかし、私たちの職場は、時がくれば、蜂球が作れる余力を残した2割の職員を持てるくらい余裕のある集団でありたいものです。
まあ、「2割の人材を辛抱強く信じて待つ」というハードルはありますが。
今回はここまでにします。
続きはまた次回。
前回を読まれる方はこちら
始めから読む方はこちら